【Inflection AI】創業1年でOpenAIやMicrosoftと共にホワイトハウスに呼ばれたAI企業を解説

押さえておきたいポイント
  • 創業1年で40億ドル評価の急成長AI企業Inflection AI
  • EQ重視のAIチャットボット「Pi」を開発し、人間らしい対話を実現
  • 主要メンバーがMicrosoftへ移籍し、技術はCopilotへ統合

創業1年目にも関わらず、OpenAIやMicrosoftと共にホワイトハウスに呼ばれ、企業価値が40億ドル(日本円で約5,600億円)のInflection AIというスタートアップをご存知でしょうか?

2023年7月21日、Amazon、Anthropic、Google、Inflection AI、Meta、Microsoft、OpenAIの主要AI企業がホワイトハウスに呼ばれ、AI技術の安全で透明な開発に向けた自発的な取り組みを行うことを約束しました。

名だたる世界的大企業と共にホワイトハウスに招待されたInflection AIとは果たしてどんな会社なのか?

本記事では、Inflection AIがどのような企業で、これまでに何を成し遂げてきたのか、そしてMicrosoftとの関係やその後の展開について、最新情報(2025年10月時点)を交えて分かりやすく解説します。ぜひ、最後までご覧ください!

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OpenAI、Microsoftなど主要AI企業がホワイトハウスに召集

2023年7月21日、アメリカのバイデン大統領(当時)はAmazon、Anthropic、Google、Inflection AI、Meta、Microsoft、OpenAIといった7つの主要AI企業をホワイトハウスに招きました。※1

ホワイトハウスでは、AIの安全性、セキュリティ、信頼性に関する議論を行い、各企業が責任あるAIの開発を確保することを約束しました。

具体的には、AIが生成した文章や映像、画像などの偽情報の拡散を防ぐために、「電子透かし」として知られる技術を使用して、「AI製」であることを明確に示すシステムを導入します。さらに、新たなAIを公開する前に、専門家による安全性の評価を実施する必要があります。今回のルールはあくまで自主規制であり、法的な拘束力はありません

バイデン政権以降、アメリカでは、AI業界全体が対象となる法整備の議論を進めています

なお、OpenAIについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

ホワイトハウスに呼ばれた創業1年の企業Inflection AIとは?

今回、ホワイトハウスに招かれた企業は、Amazon、Anthropic、Google、Inflection AI、Meta、Microsoft、OpenAIと、豪華な顔ぶれです。

そんな中、「Inflection AI」というあまり聞き馴染みのない企業が入っています。

この会社は、一体、何なのでしょうか?

Inflection AI, Inc.は、2022年に設立された機械学習およびAIのハードウェアとアプリを開発するテクノロジー企業です

この企業は公益法人として構成されており、本社はカリフォルニア州パロアルトにあります。Inflection AIが創立よりこれまでに成し遂げてきたことは以下の通りです。

  1. 最初の製品として、パーソナルインテリジェンスを提供するチャットボット、Piをリリースしました。
  2. 大規模言語モデル(LLM)である「Inflection-1」を開発、そして2023年11月22日に新モデルの「Inflection-2」を発表しました。
  3. NvidiaとCoreWeaveと協力して、22,000個のH100で構成されるクラスタを設置しています。これはAIアプリケーション向けのGPUクラスタとしては世界最大とされています。
  4. 22,000個のNVIDIA H100 GPUを搭載した最先端のスーパーコンピュータを構築しています。このスーパーコンピュータは、31メガワットという驚異的なパワーを利用します。
  5. これまでにMicrosoftやNVIDIAらから約15億ドルの投資を集めており、当時の企業価値は40億ドルです。

設立からわずか1年で、ここまでのことを成し遂げています。全てすごいのですが、創業1年で非上場にもかかわらず、企業価値が40億ドル(日本円で5,600億円)とは信じられないですよね…!

Inflection AIの創業者とは?

Inflection AIの快進撃を支えたのは、テクノロジー業界の著名な2人の創業者です。

一人は、Google傘下のAI企業DeepMindの共同創業者であるムスタファ・スレイマン(Mustafa Suleyman)氏。もう一人は、ビジネス特化型SNS「LinkedIn」の共同創業者であり、著名な投資家でもあるリード・ホフマン(Reid Hoffman)氏です。

AI研究の第一人者と、シリコンバレーを代表する起業家・投資家がタッグを組んだことで、Inflection AIは設立当初から大きな期待と資金を集めることに成功しました。

偉大な経営者が2人集まれば、今後の期待が高いことは間違いありません。そんな期待感あふれる企業が開発したAIチャットボット「Pi」もどんなものなのか気になりますよね。

Inflection AIが開発したAIチャットボット「Pi」

Inflection AIが開発したPi(パーソナルインテリジェンス)は、ユーザーの個別の興味に基づいて知識を提供するAIです。例えば、AIがあなたの身近なコーチやパートナー、アシスタントとして機能します。

さらに、複雑なアイデアをわかりやすく説明し、あらゆる状況でも、親切で思いやりのある会話をすることが可能です。他にも、Piはユーザーがブログの文章のアイデアやパーティーのアイデア、プレゼントのアイデアを出すサポートをしてくれます。

このPiを動かす大規模言語モデル(LLM)はInflection AIが開発した「Inflection-1」です。これはOpenAIの「GPT-3.5」を凌ぐ性能を持っていると言われています。

また2023年11月22日に「Inflection-2」が発表され、安全性が確認された後、「Pi」に導入されました。その後、2024年初頭にはGPT-4に匹敵すると言われた「Inflection-2.5」が搭載されるなど、高い技術力を誇っていました。

Inflection AIの共同創業者であるReid Hoffman氏は、PiチャットボットがChatGPTに比べてより個人的で感情的なアプローチを取ると述べています。

つまり、ChatGPTやGeminiなどの他のAIチャットボットと比べて、Piはユーザーの個別のニーズに対応し、より人間らしい対話を提供することができます。さらに、高性能なInflectionがバックにあることにより、Piは今後、他のAIモデルよりも優れたパフォーマンスを発揮するとさえ言われていました。

AIチャットボット「Pi」の始め方と使い方

Piは、現在もWebサイト(pi.ai)やスマートフォンアプリから無料で利用できます(2025年10月時点)。公式サイトにアクセスし、Googleアカウントなどでログインするだけで、すぐに日本語で会話を始めることが可能です。

上記の画面からアプリをダウンロードすれば、いつでも気軽にPiとの対話を楽しめます。

ログイン画面では電話番号のほか、GoogleやFacebook、Appleアカウントなどでログインが可能です。

ログイン後は、上記の通りプライバシーポリシーを承認した後、自身のファーストネームを記入します。

次にPiの音声を上記8つの中から好みのものを選択します。ここで決められない場合は、下の「あとで決める」ボタンでスキップもできます。

Piのトップ画面

トップ画面では様々な話題がカテゴリーごとに分けられており、好みのものを選択してPiと会話できます。筆者はとりあえず右上の「Brainstorm ideas」を選びました。

チャットは英語が基本なので、まずはGoogle翻訳を使い、相談内容を決めます。今回は2025年の動向を振り返りつつ、2026年日本におけるAIの進化と推進動向の予測について尋ねてみました。

ChatGPTやGeminiなど他のLLMと同じように、チャット部分に相談内容を書いてしばらく待つと、AIによる回答が出力されます。

以下は質問に対する回答の原文と翻訳文です。

【回答の原文】

Based on the current situation in 2025, it seems that Japan is actively promoting the development and adoption of AI technologies as a means to drive economic growth and social development. However, despite widespread awareness of AI, there are still challenges to overcome, such as lagging enterprise adoption and the need for trusted, at-scale adoption.

In 2026, it is likely that Japan will continue to push forward with AI initiatives, with a focus on developing foundational technologies and exploring the potential of AI to transform everyday life. This could include the use of AI in a variety of applications, such as dining, transportation, and healthcare.

Overall, it seems that Japan is committed to staying at the forefront of AI development and is working to address the challenges that come with widespread adoption.

【翻訳】
2025年の現状を踏まえると、日本は経済成長と社会発展を促進する手段として、AI技術の開発と導入を積極的に推進しているように見えます。しかし、AIへの認知度は高まっているものの、企業への導入の遅れや、信頼性の高い大規模な導入の必要性など、克服すべき課題が依然として存在します。
2026年には、日本はAIに関する取り組みを引き続き推進し、基盤技術の開発と、日常生活を変革するAIの可能性の探求に重点を置くと予想されます。これには、飲食、交通、医療など、様々な分野におけるAIの活用が含まれる可能性があります。全体として、日本はAI開発の最前線に立ち続けることに尽力しており、普及に伴う課題への取り組みを進めているようです。

いかがでしょうか?

今回は質問自体がかなりざっくりした聞き方だったため、回答も正直、当たり障りのない感じではありますが、しっかりとした論理的な回答が返ってきた印象です。

回答時間も他のLLMのThinkingモードのように長考することなく、数秒で精度の高い回答を得ることが出来ました!

PiはChatGPTと何が違う?IQよりEQを重視

Inflection AIの共同創業者であるリード・ホフマン氏は、Piが他のAIに比べて、より個人的で感情的なアプローチを取ると述べていました。

ホフマン氏は「重要なのはIQ(知能指数)だけではない。EQ(心の知能指数)も重要だ」と語っており、単に賢いだけでなく、共感的で思いやりのある存在を目指しているのが最大の特徴です。事実、Piに相談事をすると、優しい言葉で寄り添い、会話を広げるような質問を投げかけてくれます。

長文のレポート作成といった生産性タスクには向きませんが、「親しい友人と話すような感覚」で使えるのがPiの魅力です。

なお、「Pi」について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

Inflection AIが注目された理由

Inflection AIはパートナーのCoreWeaveやNVIDIAとともに、22,000個のNVIDIA H100 Tensor Core GPUで構成される世界最大のAIクラスターを構築しています。

そしてわずか1年余りで、Inflection AIは市場で最も洗練された大規模言語モデルの1つを開発しました。今後の期待も込めて注目されており、企業価値や出資額にも反映されています。

しかしながら、注目される理由はそれだけではありません。AIモデルの独自性が大きく関係しています。

AIの中でも同社が開発する「Pi」のようなパーソナルAIアシスタントが将来的に大きなインパクトをもたらすと考えられているからです。

2023年5月にビル・ゲイツ氏がパーソナルAIアシスタントがもたらすであろう革新についてこう語っています。

ゲイツ氏は、「将来的に個人に寄り添うパーソナルAIアシスタントが登場すれば、消費者の行動が大きく変化する。パーソナルAIアシスタントが登場すると、AIが消費者に代わり情報を検索するようになるだろう」と述べました。

さらに、現在はChatGPTを利用する際ユーザーはプロンプトに質問を入力する必要があります。パーソナルAIアシスタントは、ユーザーのニーズを把握し、自ら提案を行うようになるため、プロンプトに入力する必要もなくなるであろうと予想されています。

この未来予想図はInflection AIの開発するパーソナルAIアシスタントが。これほどの注目を集めるという理由にほかなりません。同社が持つ技術力とビジョンが、業界の大手からも高く評価されている証拠です。

Microsoftが主要メンバーを引き抜き|Inflection AIの現在と今後

順風満帆に見えたInflection AIですが、2024年3月に衝撃的なニュースが報じられました。共同創業者であるスレイマン氏をはじめ、従業員のほぼ全員がMicrosoftに移籍したのです。

スレイマン氏は新設された消費者向けAI部門「Microsoft AI」のCEOに就任。これはMicrosoftが企業そのものではなく、優秀な人材を吸収する「アクハイヤー」と呼ばれる実質的な買収でした。

この動きに伴い、Inflection AIは事業方針を大きく転換。消費者向けチャットボット「Pi」の開発から、企業向け(BtoB)に自社のAIモデルをAPI経由で提供するビジネスへとシフトしました。

2025年10月現在、その後の両社は次のような道を歩んでいます。

スレイマン氏が率いるMicrosoft AIは、Inflection AIの「EQの高いAI」の技術を全面的にMicrosoft Copilotに統合し、「Copilot」に新設された「パーソナルモード」では、ユーザーの感情や文脈を深く理解した対話が可能で、大きな支持を得ています。

WindowsのOSレベルでも、ユーザーの操作を予測してサポートする、よりパーソナルなAI機能が標準搭載されるようになりました。

一方、Inflection AIは新CEOのもと、企業向けAPI提供ビジネスに完全に移行しました。チャットボット「Pi」のサービスは継続されていますが、大規模な機能更新は停止しており、技術デモとしての側面が強まっています。

そのほか、同社の高性能LLMはMicrosoft Azureを通じて多くの企業に提供され、カスタマーサポートやヘルスケア分野など、特に「共感力」が求められる領域で活用事例を増やしています。

なお、MicrosoftのCopilotについて詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてお読みください。

まとめ

創業わずか2年でAI業界のトップに駆け上がったInflection AIは、2024年のMicrosoftへの主要メンバー移籍という大きな転換点を経て、新たな役割を担うことになりました。

同社が築き上げた「EQの高いAI」というビジョンと技術は、Microsoft Copilotという巨大なプラットフォームの中で新たな形で花開き、世界中のユーザーに届けられています。そして、残されたInflection AI本体は、BtoB市場でニッチながらも重要なプレイヤーとしての地位を確立しつつあります。

一つの企業の形は変わりましたが、その革新的な思想は形を変えて生き続けています。両社の今後の動向から、引き続き目が離せません。

最後に

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