
- 目的を明確化し、PoC自体を目的化しない
- 数値指標とユーザビリティなど、適切な検証方法を選定
- 過去の失敗を分析し、再発防止策を立てて次に活かす
最近話題の生成AIを自社商品やシステムに取り入れようと考えるも、PoC開発がうまくいかないといった課題を抱えている会社が増加傾向にあります。PoC開発は、事前に事業の実用可能性や効果を検証できるメリットがある反面、期待した効果を得られないが故にプロジェクト自体が頓挫してしまうケースも少なくありません。
そこで今回は、PoC開発における課題とその対策をご紹介します。最後まで目を通していただくと、PoC開発攻略の糸口が見えてくるかもしれません。
ぜひ最後までご覧ください。
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そもそも「PoC開発」とは?

PoC(Proof of Concept)開発は、日本語で「概念実証」の意味をもつ、事業の実現可能性と効果を確認するプロセスのことです。基本的に、製品を本格的に開発する前の初期段階におこなわれます。
なお、生成AI開発におけるPoC開発は、以下の流れに沿って実施するケースが多いです。
- PoCに関わるメンバーの選定
- 仮説とゴールの設定
- 具体的な計画の策定
- 機械学習モデルの開発・検証
- 検証結果の分析・次のステップへ
一見、手間がかかると感じる方も多いかもしれませんが、以下のようなメリットがあるため、新規事業を展開する際には欠かせない工程です。
- 小規模な予算で事業の可能性を検証できる
- プロジェクトが頓挫した際のリスクを低減できる
- 投資家や外部の企業に提供する資料として役立つ
特に、生成AI関連の事業を開始するにあたり、できる限りコストを抑えて効率よく事業を展開したいと考えているなら、PoC開発で実現できるかを確かめるのが効果的です。
「PoC地獄」「PoC疲れ」にみるその課題
「PoC地獄」と「PoC疲れ」はどちらも似たような意味です。多くのコストをかけてPoC開発を繰り返しても事業化できず、最終的にプロジェクトが頓挫してしまう状態を指します。
これらの現象が起きる際は、共通して以下のような課題を抱えているケースが多いです。
- PoC開発自体が事業化を見据えたものになっていない
- PoC開発の担当者と事業の担当者間でコミュニケーションが取れていない
特に、PoC開発における技術的な課題と事業化に向けた課題は必ずしも一致しないため、先にこれを理解しておくことが大切です。品質やコスト、事業化までの期間などを意識して、より事業化を見越した計画を立てる必要があります。
なお、PoC開発のメリットやデメリットについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

PoC開発が抱える具体的な課題4選

ここでは、PoC開発が抱える具体的な課題として、以下の4つを紹介します。
- 課題1.コストがかかる
- 課題2.時間もかかる
- 課題3.実現につながらない
- 課題4.ITに明るい人材の不足
PoC開発を成功させるためにも、まずは上記のような課題を理解することが大切です。以下で詳しく紹介していくので、1つずつご確認ください。
課題1.コストがかかる
PoC開発は多くの場合、予想以上のコストがかかります。特に、生成AIなどの新技術の検証には、高価な機器やソフトウェアが必要になるためです。また、外部の専門家を雇う必要が生じるなど、PoCの成功を目指す過程で計画外の追加費用が発生することも珍しくありません。
特に、小規模な企業やスタートアップにとっては、このコストの増加が資金面で大きな負担となり、プロジェクトの進行に悪影響を与えることがあります。
課題2.時間もかかる
PoC開発は迅速に進めることが理想的ですが、現実はそう簡単ではありません。新しい技術やプロセスを導入する際には、適用可能性や有効性を検証するために多くの時間が必要です。
また、開発途中で方向転換したり、追加で課題が出てくることもあります。このように、時間がかかることで、プロジェクト全体の進行に悪影響を与えてしまいます。他のビジネス活動にも支障が出る可能性があるので注意しましょう。
課題3.実現につながらない
「PoC地獄」や「PoC疲れ」ともよく言われますが、PoC開発がうまくいかずに、プロジェクトが頓挫してしまうケースはよくあります。逆に、PoC開発が成功したとしても、それが実際の製品やサービスに結びつかないケースも珍しくありません。技術的な課題をクリアできても、ビジネスモデルや市場の需要に合わないことがあります。その場合は、実現には至りません。
このような状況は、企業にとって時間とリソースの大きな浪費となるため、できる限り避けたいところです。
課題4.ITに明るい人材の不足
生成AIが絡むPoC開発には高度な技術的知識が求められるため、ITに明るい人材が必要不可欠です。しかし、多くの企業においては、こうした専門知識を持つ人材が不足しています。特に、新技術や特定の分野に精通した専門家の確保は難しく、その結果PoC開発が遅延したり、品質が低下するケースも少なくありません。
人材不足は、企業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)にも影響を及ぼし、競争力の低下を招くリスクがあるため、早急に対策を講じましょう。
なお、生成AIの開発費用を抑える方法について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

PoC開発の課題を解決する3つのカギ
PoC開発の課題を解決する方法として、以下の3つをご紹介します。
- MVP(Minimum Viable Product)
- DevOps
- オフショア開発
上記はいずれも開発手法のことを指しています。それぞれの方法の概要やメリットについて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
MVP(Minimum Viable Product)
MVP(Minimum Viable Product)とは、顧客が抱えている課題を解決できる最低限の状態で、サービスや製品を提供する開発手法のことを指しています。PoCで得た検証結果をもとに、市場で実際の顧客反応を確かめる段階として活用されます。最初から完璧な製品を目指さず、リリース後の改善を前提とする点が特徴です。この考え方により、開発コストや時間を抑えながら実践的な検証が可能になります。
PoC疲れを防ぐには、PoCの段階で事業目的と評価指標を明確にすることが重要です。MVPは、PoCでの成果を市場に橋渡しするための実践的なアプローチです。PoC開発の負担を感じている場合は、MVPを取り入れて効率的な開発を目指しましょう。
DevOps
DevOpsは、企業の開発担当と運用担当が連携・協力して、サービスや製品をスムーズに開発するソフトウェアの開発手法です。担当者同士やツールの連携を強化することで、お互いのコミュニケーションを円滑に図れるようにします。
このDevOpsを取り入れれば、PoCの課題で挙げられる「PoC開発の担当者と事業の担当者間でコミュニケーションが取れていない」という課題を解決可能です。
オフショア開発
オフショア開発とは、国内よりコストが安い海外の企業に製品開発や運用保守を委託する開発方法です。経費削減ができるほか、海外人材を確保することで、IT人材の不足といった課題を解決できます。
PoC開発においても、IT人材の不足は深刻な課題です。もし、「IT人材を用意したいけどコスト面での負担が厳しい」といった悩みを抱えているのであれば、オフショア開発も視野に入れてみてください。
PoC開発の前に押さえておきたいポイント3つ

PoC開発の前に押さえておきたいポイントは、以下の3つです。
- PoC開発の目的
- 検証方法
- 過去のPoC開発における失敗
上記のポイントを押さえておけば、PoC開発に失敗する可能性を低減させられます。PoC疲れやPoC地獄といった問題に直面する前に、ぜひ確認しておいてください。
PoC開発の目的
まずは、PoC開発の目的を明確にすることが大切です。PoC開発でよくある失敗の一つは、PoC開発そのものが目的になってしまうことです。その結果、事業に活かせる製品やサービスを開発できないケースがあります。
なお、PoC開発の目的は製品やサービスの実現可能性を検証することにあるので、最初から完璧を目指しすぎるのもよくありません。事業化を見据えた明確な目的を策定し、そこから必要な期間やコストなどの実施計画を立てましょう。
検証方法
PoC開発の検証方法にはさまざまなものがあるため、具体的にどの方法で検証するか決めましょう。
以下は、検証方法の一例です。
- KPI計測(時間や完了率の計測)
- ユーザビリティテスト(使用感のフィードバックを受ける)
検証方法は大きく2つに分けられます。1つは数値で計測できるデータを集める方法、もう1つは操作のしやすさやUIの見やすさなど、数値では表せないフィードバックを受ける方法です。
これは製品やサービスの特性次第で採用すべき方法が異なるほか、場合によっては両方を組み合わせたほうがよいケースがあるのも特徴です。
過去のPoC開発における失敗
過去のPoC開発で失敗した経験がある場合は、その経験を次のPoC開発に生かしましょう。失敗した原因を分析して、対策を練ってから次のPoC開発に挑むのが重要です。
もし、PoC開発が初めての場合は、他社のPoC開発の事例を参照するのも有効です。同じ失敗を繰り返さないよう、入念な計画を練ってPoC開発をスタートさせましょう。
なお、生成AIを開発するリスクについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

PoC開発の課題を対策してプロジェクトを成功させよう
PoC開発は、サービスや技術の実現可能性を検証するための実験的な開発手法で、通常は小規模な予算や期間で実施されることが多いです。しかし、現実には「PoC地獄」や「PoC疲れ」といった問題が発生しており、さまざまな課題を抱えています。
具体的な課題として、当記事では以下の4つをご紹介しました。
- 課題1.コストがかかる
- 課題2.時間もかかる
- 課題3.実現につながらない
- 課題4.ITに明るい人材の不足
上記の課題を解決するための手段として、以下の開発手法を取り入れるのもおすすめです。
- MVP(Minimum Viable Product)
- DevOps
- オフショア開発
また、PoC開発に挑む際は、以下のポイントを押さえておくことも大切です。
- PoC開発の目的
- 検証方法
- 過去のPoC開発における失敗
プロジェクトの成功率を高めるためにも、当記事で紹介したPoC開発の課題やその対策方法を参考にしてみてください。

最後に
いかがだったでしょうか?
生成AIのPoCを確実に事業化へつなげるために、貴社の目的整理から検証設計、過去の失敗パターンの洗い出しまでを体系的に整理した最適なアプローチを提示します。
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【監修者】田村 洋樹
株式会社WEELの代表取締役として、AI導入支援や生成AIを活用した業務改革を中心に、アドバイザリー・プロジェクトマネジメント・講演活動など多面的な立場で企業を支援している。
これまでに累計25社以上のAIアドバイザリーを担当し、企業向けセミナーや大学講義を通じて、のべ10,000人を超える受講者に対して実践的な知見を提供。上場企業や国立大学などでの登壇実績も多く、日本HP主催「HP Future Ready AI Conference 2024」や、インテル主催「Intel Connection Japan 2024」など、業界を代表するカンファレンスにも登壇している。

