
- GraphCastとはGoogle DeepMindが開発した機械学習ベースのAI気象予測モデル
- 10日先の天気を1分で予測するGoogle DeepMindの気象AI
- 従来モデルより省エネで高精度な予測を実現
「AIが気象予測を変える」と聞いても、どこか遠い話に感じていた方も多いかもしれません。ところが2023年以降、その変化は一気に現実のものになりつつあります。Google DeepMindが開発した「GraphCast」は、スーパーコンピューターを使わずとも10日先の天気を1分以内に予測できるAIモデルです。
精度面でも、世界トップクラスの気象予測機関であるECMWFの従来モデルを多くの指標で上回ることが実証されており、気象・防災・エネルギー分野を中心に注目を集めています。
さらに2024年以降は、後続モデルのGenCastやWeatherNextが登場し、AI気象予測の進化は加速する一方です。本記事では、GraphCastの仕組みや特徴を技術的な観点から整理しつつ、後続モデルの動向や実用化の現状まで網羅的に解説します。
AI・機械学習の最前線を追っている方や、気象データを業務・研究に活用したい方にとって、一歩踏み込んだ理解を得られる内容を目指しました。ぜひ最後までご覧ください。
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AI天気予報・気象AIとは
AI天気予報(気象AI)とは、人工知能(AI)や機械学習の技術を活用して気象予測を行うシステムのことです。従来の気象予測は、物理法則に基づく複雑な計算をスーパーコンピューターで行う数値予報モデルが主流でした。
一方、AI天気予報は、過去の膨大な気象データをAIに学習させることで、気象パターンや相関関係を導き出し、将来の天気を予測します。
AI天気予報の大きな特徴は、予測スピードの速さと計算コストの低さです。スーパーコンピューターによる大規模なシミュレーションを必要とせず、一度学習を終えたAIモデルであれば、一般的なコンピューターでも短時間で高精度な予測を出力できます。
近年では、Google DeepMindなどのテクノロジー企業が次々と革新的なAI気象予測モデルを発表しており、気象予測の分野に大きな変革をもたらしています。
Google DeepMindが革命的なAI気象予測モデル「GraphCast」を発表
▼GraphCastによる10日間の気象予測結果の例
2023年11月14日(現地時間)、Google DeepMind社は科学学術雑誌のScienceにて、新たなAI気象予測モデル「GraphCast」を発表しました。
GraphCastは10日先の天気まで素早く予測でき、従来モデルだと数時間かかっていた予測が、なんと1分以内に完了します。
またGraphCastは、ただ予測が速いだけでなく、正確性にも非常に優れています。
例えばヨーロッパ中期予報センターの予測モデル(HRES)と比較した研究では、評価対象となった1380の指標(変数と予測時間の組み合わせ)のうち、90%以上でHRESを上回ったそうです。さらに対流圏のテスト変数においては99.7%でHRESを上回ったのだとか。
GraphCastは、発表当初は実用化まで時間がかかるとされていましたが、現在ではヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)などで実際の運用に向けたテストや活用が進められています。2024年には、その革新的な技術が評価され、英国の権威ある工学イノベーション賞である「MacRobert Award」を受賞しました。竜巻やハリケーンのような異常気象を素早く正確に予測し、世界中で多くの人命を救う技術として、GraphCastは気象予測の新たなスタンダードになりつつあります。
生成AIを用いた最新の仕事術について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

GraphCastの特徴
GraphCastは、従来の気象予測モデルと比較して、以下の2つの大きな特徴を持っています。
従来よりも大幅にエネルギー・コストを削減できる
従来の気象予測モデルは、スーパーコンピューターによる大規模なシミュレーションに基づき、予測を行っています。この手法は正確な予測が可能である反面、膨大な計算リソースとエネルギーコストを要することが課題でした。
一方GraphCastは、1979年以降の約40年分の過去の気象データを基に、AIが機械学習によって気象予測を行うという仕組みになっています。GraphCastはスーパーコンピューターを使わずとも、単一のAI用プロセッサ(TPU)で高速に作動できるため、従来よりも大幅にエネルギー・コストを削減できるのです。
予測スピードが非常に速く、精度も高い
GraphCastは従来のモデルと比較して、予測スピード・精度ともに優れています。例えばヨーロッパ中期予報センターの予測モデル(HRES)と比較した実験では、HRESだと数時間かかってしまう予測を、GraphCastは1分以内に実行できました。予測の精度についても、実験を行った1,300区域のうち90%以上で、GraphCastの方がHRESよりも優れた結果を残したそうです。
ここで参考までに、GraphCastとHRESの予測精度を比較した研究結果を紹介します。

- z500:500hPaの気圧面(地表から約5,500mの高さ)
- Lead time:気象現象発生が予測される時刻と、その予測が発表される時刻の間の時間
- RMSE:気象予測の誤差を表す指標(RMSEが小さい=予測精度が高い)
- ACC:気象予測の正確性を表す指標(ACCが大きい=予測精度が高い)
上図a)b)よりGraphCastの方がHRESよりもRMSE値が小さく、図c)よりGraphCastの方がHRESよりもACC値が大きくなっています。
すなわち、GraphCastの方がHRESよりも、予測精度が明らかに優れていることがわかりますね。
生成AIを用いた驚きの活用事例について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

GraphCastの後続モデルが登場
Google DeepMindは、GraphCastの成功に留まらず、さらに進化したAI気象予測モデルを次々と発表しています。
GenCast
2024年12月、Google DeepMindは新たなAIアンサンブル気象予測モデル「GenCast」を発表しました。GenCastは、画像や動画の生成AIでも使われる拡散モデル(Diffusion Model)を応用したシステムです。
従来のGraphCastが「単一の最適な予測(決定論的予測)」を出力するのに対し、GenCastは「複数の可能な予測パターン(アンサンブル予測)」を生成し、気象の不確実性やリスクを確率的に評価できるのが特徴です。15日先までの予測において、世界トップクラスの運用システムであるECMWFのENSモデルを上回る精度を達成しています。
GenCastについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご確認ください。

WeatherNext
2025年11月に発表された「WeatherNext 2」は、Google DeepMindとGoogle Researchが共同開発した最新のAI気象予測モデルファミリーです。
WeatherNext 2は、Functional Generative Network(FGN)と呼ばれる新しいAIアーキテクチャを採用しており、従来のモデルよりも高い解像度(最大1時間単位)で、数百もの予測シナリオを高速に生成できます。この技術は、Google検索やGoogleマップの天気情報など、すでに実際の製品にも組み込まれ始めています。
WeatherNextについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご確認ください。

各モデルの比較
| 比較項目 | GraphCast | GenCast | WeatherNext 2 |
|---|---|---|---|
| 発表時期 | 2023年11月 | 2024年12月 | 2025年11月 |
| アーキテクチャ | Graph Neural Network(GNN) | 拡散モデル(Diffusion Model)+ GNN | Functional Generative Network(FGN) |
| 予測タイプ | 決定論的予測(単一予測) | アンサンブル予測(50予測以上) | アンサンブル予測(64予測) |
| 予測期間 | 10日先 | 15日先 | 15日先 |
| 時間解像度 | 6時間間隔 | 12時間間隔 | 6時間間隔(実験的に1時間単位も対応) |
| 空間解像度 | 0.25°(約28km) | 0.25° | 0.25° |
| 予測所要時間 | 1分以内(TPU 1台) | 約15日予測を8分(TPU 1台) | 1予測1分以内(TPU 1台) |
| 比較対象モデル | ECMWF HRES | ECMWF ENS | WeatherNext Gen(前世代) |
| オープンソース | 公開済み | 公開済み | 公開済み |
よくある質問
GraphCastが実用化すれば、突発的な異常気象も素早く正確に予測できる
GraphCastを活用すれば、竜巻やサイクロンなどのように、突発的に発生する異常気象も素早く正確に予測できます。
実際に、2023年9月に大型ハリケーンLeeがノバスコシア州に上陸した際、GraphCastは9日前からその上陸を正確に予測していたのです。(ちなみに従来モデルは6日前まで予測できなかったのだとか)
GraphCastは現状、降水量の予測など一部の項目では従来モデルよりも精度が劣っており、当初は実用化に時間がかかるとされていましたが、現在ではECMWFなどで試験運用が始まっており、実用化に向けた動きが急速に進んでいます。
しかし、GraphCastが将来的に実用化されて異常気象をいち早く予測できれば、きっと今よりも多くの人命が救われるに違いありません。まだまだ課題は多いかと思いますが、できるだけ早く研究・開発が進むといいですね。
GraphCastが切り拓くAI気象予測の未来とビジネス活用
GraphCastの登場は、気象予測のあり方を根本から変えるインパクトを持っています。そして、その後続モデルであるGenCastやWeatherNextの登場により、AIによる気象予測はさらに進化を続けています。
こうしたAI技術の進化は、気象予測に限らず、あらゆるビジネスの現場で変革を起こしつつあります。AIを自社の業務にどう活用できるか、最新のAIツールをどう導入すべきかお悩みの方は、ぜひ弊社のAI導入支援サービスをご検討ください。

最後に
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