
- RAGは社内マニュアル等を直接検索・参照して回答を生成するため、生成AI単体では難しい自社独自の文脈に沿った高精度な回答を出力できる
- 回答精度は元データの品質に大きく依存するため定期的な整理や更新が不可欠である
- 小規模なPoC検証から始めて課題を調整するのが効果的で、中小企業でも手軽に導入可能
RAG(検索拡張生成)は、AIの回答精度と柔軟性を大幅に高める技術として、今ビジネス現場で急速に注目を集めています。社内データの横断検索やカスタマーサポートの自動化など、多様な業務で圧倒的な成果を上げています。
この記事ではRAGの基礎知識や導入メリットはもちろん、押さえるべき注意点や実在企業の活用事例まで分かりやすく解説します。自社業務の効率化やAI活用のヒントを得たい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
\生成AIを活用して業務プロセスを自動化/
RAGとは

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、情報検索技術と自然言語生成技術を組み合わせたAIモデルの一種で、日本語では検索拡張生成と呼ばれています。この技術は、大量のデータベースやインターネットから必要な情報をリアルタイムで検索し、その情報を基に適切な文章を生成する仕組みです。
従来のAIは事前に学習したデータに基づいて回答を生成していましたが、RAGは新しい情報を検索しながら生成するため、より正確かつ最新の回答が得られるというのが特徴です。この技術は、ビジネス文書の自動生成やカスタマーサポートなど、さまざまな場面で応用されるほど各分野で注目されている仕組みです。
RAGについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ファインチューニングとの違い
ファインチューニングとは、大量に学習したモデルに、特定のタスクや関連したデータを追加学習させることで、回答の精度を高める手法です。RAGとファインチューニングは、どちらもAIモデルを改善するための手法ですが、その目的やアプローチに違いがあります。以下の表にまとめました。
| 内容 | RAG | ファインチューニング |
|---|---|---|
| データの扱い方 | 外部データをリアルタイムで取得 | 事前に特定のデータを学習 |
| リアルタイム性 | 最新の情報をもとに回答できる | 学習後の情報は回答できない |
| 回答速度 | 時間がかかる場合がある | 早い |
| 実装方法 | 検索エンジンや外部データベースとの連携が必要 | 既存モデルに追加学習するのみ |
| 利用シーン | 最新情報が必要な場面や意思決定や調査業務など | 医療や法律などの特定の分野に特化した知識が必要な場面 |
RAGとファインチューニングの違いについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

RAGの活用事例15選

RAGの説明をしていきましたが、具体的な利用イメージがわいていない方もいるかもしれません。ここでは、実際にRAGを活用している事例を紹介します。業務効率化のためのヒントにしてみてください。
事例①社内データの検索
デロイトトーマツコンサルティングは、全社員5,000人が生成AIを活用できる環境を構築しています。正確で有益な情報を提供できないとコンサルタントは務まらないため、生成AIの回答も正確性が重要です。
より正確な回答ができるように、2023年10月にRAGを導入しました。仕組みとしては、データベースに保管した社内データを生成AIモデルが参照し、自社固有の回答ができるようになっています。ファインチューニングとは異なり、社内データを追加学習させていないため、実装がしやすかったとのことです。*1
事例②問い合わせ業務の効率化
東京地下鉄株式会社は、年間25万件の問い合わせ業務効率化のため、2024年秋を目標に生成AIを導入すると発表しています。導入対象の業務は、お客様向けチャットボットとお客様センターです。
RAGを活用しているのは主にチャットボット業務です。従来では一般の問い合わせを対象としたFAQ応答型で対応していたものの限界が来ていました。そこでRAGを活用することで、FAQで対応できないものは東京メトログループの公式WEBサイトから回答できるようになり、利便性を向上させ、顧客満足度向上を目指しています。*2
事例③採用活動の支援
一人ひとりの多様な家族像が実現できる社会づくりを目指しているコネヒト株式会社は、社内文書を効率よく参照するためにRAGを利用しています。このサイトで紹介されている例は、書籍購入制度の有無ですが、採用活動の支援にも利用は可能です。*3
社内文書をすばやく正確に回答してくれるため、採用活動で使われる履歴書や職務経歴書はもちろんのこと、社内の人事評価に関わる資料にアクセスできれば、より会社が求めている人材かどうか判断しやすくなりますよね。採用活動の支援にもRAGは活用できるといえます。
事例④営業活動の支援
LINEヤフー株式会社は、生成AIを活用した社内向け独自業務効率化ツール「SeekAI」を全従業員に本格導入したと発表しました。SeekAIは、膨大な文章データベースから検索要件に最適化された情報を取得し、回答するためにRAGを利用しています。テスト導入段階では広告事業のカスタマーサポート業務で約98%の正答率を達成するなど高い導入効果が見込まれています。
SeekAIを使えば、顧客とのコミュニケーション履歴から営業資料を作成したり営業戦略を策定したりできるため、効率のよい営業活動が可能です。その結果成約率が向上し、顧客満足度を上げることも可能と言えるでしょう。*4
事例⑤社内規程・マニュアル検索の効率化
三井住友銀行では、全行員が利用できる独自の生成AIプラットフォーム「SMBC-GAI」を導入しています。行内には約130万件におよぶ規程や業務マニュアルが存在しており、従来は目的の情報を見つけ出すまでに多くの時間を要していました。
そこでRAG技術を活用し、膨大な社内ドキュメントを即座に参照して回答を生成する仕組みを構築しました。これにより、行員からの業務照会や各種手続きに関する問い合わせ対応時間が劇的に短縮され、行全体の生産性向上に寄与しています。*5
事例⑥カスタマーサポート・技術照会の効率化
セゾンテクノロジー(旧セゾン情報システムズ)では、自社製品のサポートデスク業務においてRAG技術を導入しました。技術サポートエンジニアは、顧客からの複雑な技術的問い合わせに対し、製品マニュアルや過去の障害対応履歴から適切な情報を探す必要がありました。
RAGを活用することで、過去の対応事例やマニュアルから即座に最適な回答案を抽出し提示できるようになり、回答作成時間を最大で約30%削減することに成功しています。 *6
事例⑦安全管理・労働災害予防の支援
建設現場における安全管理を徹底するため、東洋建設では自社AI「TOYO ChatGPT」の安全専用GPT「K-SAFE 東洋 RAG適用Version」にRAG技術を組み込みました。
過去の労働災害データや自社の安全防止基準マニュアルをAIと連携させることで、現場の安全管理者が類似の危険事例や必要な対策を自然言語で迅速に検索できる環境を実現しました。現場での事故防止策の策定や、安全教育の精度向上に大きく貢献しています。 *7
事例⑧全社向けナレッジ共有の推進
素材メーカー大手のAGCでは、全社向け生成AI基盤「ChatAGC」を展開し、その機能としてRAGを活用した社内データ連携機能を付与しました。社内に散在する営業情報や顧客ニーズ、技術ドキュメントなどの独自データをAIに読み込ませることで、従業員が知りたい情報を対話形式で正確に引き出せる仕組みを整備しました。
ファインチューニングを行わずに最新の社内データを参照できるRAGのメリットを活かし、全社的なナレッジシェアと検索工数の削減を進めています。 *8
事例⑨社内ナレッジ検索・情報共有の効率化
建設現場マッチングプラットフォームを提供する助太刀では、社内ツール(Notion・Slack・Google Drive等)に蓄積された非構造化データをRAGで統合検索できる環境を構築しました。
部署をまたいだ情報検索や過去の決定事項の確認が対話形式で完結できるようになり、情報探しの手間を削減するとともに、組織内の情報サイロ化の防止に繋げています。 *9
事例⑩カスタマーサポートの回答作成支援
三井住友カード株式会社では、月間数十万件におよぶコンタクトセンター(問い合わせ窓口)の対応効率化に向け、RAG技術を活用した生成AIを本格導入しました。顧客からの各種照会に対し、膨大なFAQや過去の問い合わせ履歴から関連する回答ルールをAIが自動で検索・参照し、オペレーター向けの返信メール文面の下書きを瞬時に作成。文面作成の時間が大幅に短縮されるとともに、回答品質の均一化も達成しています。 *10
事例⑪機器保守・トラブルシューティングの支援
富士フイルムビジネスイノベーションでは、複合機などの保守にあたるカスタマーエンジニア向けにRAG技術を組み込んだ保守サポート基盤を展開しています。機器の修復マニュアルやエラーコード情報、過去の故障診断履歴をAIが検索・解析し、現場のエンジニアへ最適な修復手順を提示します。これにより現場でのトラブルシューティング時間を大幅に縮小し、保守作業の効率化と初回訪問修理率の向上を実現しています。*11
事例⑫カスタマーサポートの自動化
東京地下鉄株式会社では、年間約25万件におよぶお客様からの問い合わせに対し、従来の定型FAQチャットボットでは対応可能な範囲に限界がありました。そこでRAGシステムを導入し、公式Webサイト等の最新情報をAIがリアルタイムで検索・参照して回答を自動生成する仕組みを構築しました。
鉄道会社として初となる本格的な生成AI活用により、FAQに含まれない複雑な質問に対しても迅速かつ正確に自動回答できるようになりました。*12
事例⑬専門的な鉄道業務の内製AI化
汎用AIでは対応できない鉄道事業者独自の専門的な内規・安全基準・技術マニュアルを参照するため、東日本旅客鉄道株式会社は社内の専門エンジニアチームがRAGシステムを独自に内製開発しました。
現場の作業者や保線スタッフが膨大な業務ドキュメントを対話形式で即座に横断検索できる基盤を整備しています。導入によって、現場における安全基準の確認漏れや誤認を防ぐとともに、緊急時における迅速な情報照合と適切な対応を可能にし、鉄道運行の高度な安全維持と業務効率化を両立させています。*13
事例⑭社内ドキュメントの照会回答
朝日生命保険相互会社では、3,500件を超える社内ドキュメントや各種規程類を社員が手作業で調べる必要があり、営業所や窓口での照会対応が大きな負担となっていました。PKSHAのAIヘルプデスクにRAGを組み合わせ、社内文書社内文章を自動検索・要約して回答する照会システムを導入しました。
本社と全国の営業所間で行われる確認作業の時間が劇的に短縮され、社内での情報探しの工数削減だけでなく、顧客への案内スピードと回答クオリティの向上を高いレベルで達成しています。*14
事例⑮社内ドキュメントの照会回答
先進マテリアル分野の新素材開発において、出光興産株式会社は大量の競合製品データや特許情報を短時間で分析する必要がありました。そこで、特許や競合分析レポートの作成支援と、製品の不具合照会に応じる技術サポートの2領域にRAG基盤を導入しました。
複雑な特許情報の集計やレポート作成にかかる手間を大幅に削減できたほか、過去の類似トラブル事例や対処ノウハウを即座に引き出せる環境が整い、技術サポート業務の迅速化と精度向上を実現しています。*15
開発事例を含めてRAGについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ビジネスにおけるRAGの活用ユースケース

RAGは自社独自のデータを参照して正確な回答を生成できるため、多様なビジネスシーンで活用が進んでいます。ここでは、業務効率化や生産性向上に直結する代表的な5つの活用ユースケースを紹介します。
社内データを検索する
社内に散在する規程集・業務マニュアル・技術仕様書・過去の議事録などのドキュメントを対象にRAGを構築することで、高度な社内検索エンジンとして活用できます。従来のようにフォルダを一つずつ探したり大量のファイルを読み込んだりする必要がなくなり、チャット上で質問するだけで求める情報や要約を即座に引き出せます。
ナレッジの共有や情報探しの時間削減に直結し、バックオフィス部門をはじめ全社的な業務スピードを大幅に引き上げるユースケースです。
問い合わせ対応を効率化する
カスタマーサポートや社内ヘルプデスクにおいて、過去の対応履歴やFAQデータベースとRAGを連携させる活用法です。顧客からの照会に対してAIが最新のFAQや製品情報を参照し、最適な回答案や返信メールの下書きを瞬時に作成します。経験の浅いオペレーターでもベテランと同等の迅速かつ高品質な回答が可能になり、一次対応コストの削減と回答速度の向上を同時に実現します。
また、複雑な質問にも柔軟に対応できるため、顧客満足度の向上にも寄与します。
採用活動を支援する
採用業務においては、自社の評価基準・過去の採用選考データ・社内ルールなどのドキュメントをRAGに参照させることで選考や応募者対応を効率化できます。例えば、求職者の職務経歴書と自社の求める人物像や評価基準を照合し、適合度の一次スクリーニングや面接時の質問案作成をAIが補佐します。
応募者からの福利厚生や働き方に関する問い合わせに対しても社内規程に基づき迅速かつ正確に自動回答できるため、採用担当者の業務負担を大幅に軽減します。
営業活動を支援する
営業部門では、過去の提案書・競合比較資料・製品のFAQ・商談ナレッジをRAGに読み込ませることで、商談準備や提案作成の強力なアシスタントとして機能します。顧客からの専門的な質問に対して最適な製品構成や過去の成功事例を即座に引き出せるほか、顧客の課題に応じた提案書の下書きやヒアリングシートを自動生成できます。
営業担当者ごとのスキル差や情報の属人化を防ぎ、組織全体の提案クオリティ向上と商談サイクルの短縮に大きく貢献します。
契約書や専門資料を検索する
法務部門の契約書や、建設・製造現場の安全基準・技術仕様書といった複雑で専門性の高いドキュメントの検索にもRAGは極めて有効です。特定の条件が含まれる過去契約書や特定の地盤・工法における施工実績などを自然言語で横断検索し、該当箇所や注意事項を即座に抽出できます。
専門用語や解釈が難しい文書であっても、根拠となる参照元を示しながら回答を要約してくれるため、リスク確認や意思決定のスピードを飛躍的に向上させます。
RAGをビジネスで活用するメリット

RAGは自社データをAIと連携させ、業務効率化や精度向上を実現する技術です。ここからは、社内検索や問い合わせ対応などビジネス現場でRAGを導入することで得られる5つのメリットを解説します。
自社データに基づく回答を生成できる
RAGを活用すれば、社内規定や業務マニュアル・商品カタログといった自社固有のデータに基づく回答をAIに生成させることができます。一般的なLLM(大規模言語モデル)は自社の非公開データを保持していませんが、RAGは回答時に指定された社内データベースを検索し、参照して文章を作成します。
LLM自体に自社情報をファインチューニングさせるわけではないため、機密情報を保護しながら自社の文脈に沿った正確な回答を得られる点が大きな利点です。
最新情報を回答に反映しやすい
RAGは、参照元となるデータベース内のファイルを更新するだけで、素早く回答へ反映できる柔軟性を持っています。AIモデル全体の再学習には膨大な時間と費用がかかりますが、RAGなら元データを差し替えるだけで新しい運用ルールや新商品の情報を扱えます。
ただし、データを用意するだけで常に最新情報が自動で出力されるわけではありません。AIが最新の正解を出すようにするには、社内ドキュメントの改訂や不要な古いファイルの整理など、適切な維持管理が不可欠です。
情報を探す時間を短縮できる
社内に散在する複数の文書やファイル群を横断的に検索し、要約された回答形式で出力できるため、情報探しの負担を大幅に削減できます。従来のように目的の資料を一つずつ開いて該当箇所を目視で探す必要がなくなり、チャット上で質問するだけで欲しい情報に素早くアクセス可能です。
特に、膨大なマニュアルを扱うバックオフィス部門や技術サポートデスクにおいて、検索コストの削減と業務のスピードアップに直結する大きな効果を発揮します。
問い合わせ対応を標準化できる
全担当者が共通の社内データやFAQデータベースを参照して回答案を作成するため、属人化を防ぎ、対応品質のばらつきを抑制できます。経験の浅いスタッフであってもベテランと同等の正確な一次回答案を作成できるようになり、組織全体のサポートスキルの平準化に役立ちます。
なお、ハルシネーションのリスクを完全にゼロにはできないため、顧客への最終回答や重要事項の伝達においては、提示された回答案を人間が確認した上で送信する運用ルールが重要です。
回答の根拠を示しやすい
回答の生成に使用した参照ドキュメント名や該当ページなどを提示できるため、ユーザーが情報の正確性を自身で検証しやすい点がメリットです。提示された出典を確認することで情報の裏付けが容易になり、AI回答に対する信頼性が高まります。
ただし、回答とともに出典元を表示させるには、システム構築時に参照先URLや文書タイトルを出力するようなロジック設計が必要です。単にRAGを導入しただけで自動的に出典が表示されるわけではない点に留意しましょう。
RAGをビジネス導入する方法
RAGのビジネスへの導入には、適切なステップと準備が不可欠です。業務選定からデータの整理、導入手法の選択、検証、運用体制の構築まで、失敗を防ぐ導入手順を6つのステップで解説します。
利用目的と対象業務を決める
まずは「どのような課題を解決したいのか」「主な利用者は誰か」を明確にし、対象とする業務を特定します。社内問い合わせ対応の短縮や営業資料探しの効率化など、具体的な活用シーンを決定することが重要です。
あわせて、「問い合わせ対応時間を30%削減する」「回答作成工数を月10時間減らす」といった導入効果を測る目標値も事前に設定します。ゴールを明確に定義しておくことで、導入後の費用対効果の検証や改善施策がスムーズになります。
参照させるデータを整理する
AIに参照させる社内マニュアル・FAQ・仕様書などのドキュメントを収集し、事前の整理作業を行います。RAGの回答精度は元データの質に大きく依存するため、古い情報・不正確な記述・データの重複などを精査して取り除くデータクレンジングが欠かせません。
また表記の揺れを整えたり、PDFやテキストなどAIが読み込みやすい形式に揃えたりする作業も必要です。適切な整理を行うことが、ハルシネーションを防ぐ第一歩となります。
利用するサービスや構築方法を選ぶ
自社の予算・求められるセキュリティ水準・社内の運用体制に合わせて最適な導入手法を選択します。選択肢には、既存のSaaS型RAGツール・クラウド事業者が提供するAIサービスを活用した開発・一から独自構築する自社開発などがあります。
社内機密情報を扱う場合はセキュリティ要件のクリアが最優先となるため、データの取り扱い規定を満たしているかを念入りに確認しましょう。コスト面だけでなく、導入後のメンテナンスのしやすさも考慮して選定することが大切です。
小規模なPoCを実施する
最初から全社に一括導入するのではなく、特定の部署や特定の業務データに絞った小規模な概念実証(PoC)からスタートします。限定された範囲で実際にRAGを試運転させることで、想定していた業務課題をクリアできるか、現場の利用者がスムーズに扱えるかといった効果と課題を検証します。
早い段階で小さな成功体験と現場からのフィードバックを得ておけば、システム構成の見直しや使い勝手の改善を低リスクで進められ、全社展開時の失敗を防げます。
回答精度を検証して改善する
PoCの運用結果をもとに、AIがユーザーの質問意図に沿った情報を正しく検索できているか、提示された回答内容が正確かを詳細に検証します。もし求めている回答が得られない場合は、元データの分割方法の変更・検索アルゴリズムのパラメータ調整・入力するプロンプトの改善などを繰り返し行います。
データ側とシステム側の双方からチューニングを重ねることで、実務で安心して使えるレベルまで回答精度を引き上げていきます。
本番運用とデータ更新の体制を整える
本番運用へ移行するにあたり、システムを継続的に安全運用するためのルールと体制を確立します。社員の役職に応じたアクセス権限管理・回答ログの定期的なチェック・誤回答が発生した際の迅速なフォロー手順などをあらかじめ取り決めておきます。
また業務マニュアルや規程の改訂に伴い、参照データを誰がどのタイミングで更新・管理するのかといった運用フローを明文化しておくことが、AI回答の鮮度と信頼性を維持し続けるために不可欠です。
RAGの構築方法について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

RAGを導入する際の注意点

RAGの導入には多くのメリットがある一方、運用面や技術面で押さえるべき注意点が存在します。導入前に必ず知っておくべき6つの注意点を解説します。
生成速度が低下する可能性がある
RAGはユーザーの質問を受けてから社内データの検索と生成AIによる回答の作成という2つの処理を連続で行うため、通常のLLM単体でのやり取りよりも回答までに時間がかかる傾向があります。
検索対象となるドキュメントの量やシステム構成によっては、数秒〜十数秒の待ち時間が発生し、利用者のストレスにつながるケースも少なくありません。導入時には検索アルゴリズムの軽量化やキャッシュの活用など、応答速度を維持するためのシステム設計を考慮しておく必要があります。
構築や精度改善に専門知識が必要
実務で使えるレベルのRAGを構築・運用するには、一定の専門技術とノウハウが求められます。単にデータをAIに読み込ませるだけでは期待通りの回答が得られないことも多く、ドキュメントの適切な分割やベクトル検索のチューニング、プロンプトの調整といった細かな精度改善作業が不可欠です。
社内に技術的な知見を持つ人材が不足している場合は、専門のエンジニアを採用するか、サポート体制が手厚い既存のRAGツールや外部ベンダーを活用する検討が必要です。
参照データの品質が回答を左右する
RAGの回答精度は、参照元となる社内データの品質に大きく依存します。ゴミを入れればゴミが出ると言われるように、参照データ内に表記の揺れ・矛盾した記述・古い情報などが含まれていると、AIは正しく情報を抽出できず誤った回答を生成してしまいます。
RAGのパフォーマンスを最大限に引き出すためには、システム導入前のデータクレンジングだけでなく、AIが読み取りやすいよう文書のフォーマットや構造を整えておく前処理が重要です。
誤回答を完全には防げない
RAGは根拠となる文章を提示させることでAIの不確実性を大幅に軽減できますが、誤った情報を出力するハルシネーションを完全にゼロにすることはできません。AIが参照文脈の解釈を誤ったり、質問の意図とずれた文脈を検索してしまったりすることで、事実と異なる回答を提示するリスクは常に残ります。
そのため、重要な業務上の判断や外部顧客への回答においてはAIを過信せず、提示された参照元データを出典で確認する運用フローや、最終的に人間がチェックする体制が不可欠です。
データの更新・管理が必要
RAGを導入した後も、参照する社内データを最新かつ正確な状態に保ち続けるための運用管理が必要です。会社の規程変更や商品の仕様改訂が反映されないまま放置されると、古い情報に基づいた回答が出力され続け、業務上のトラブルを引き起こす原因となります。
データの追加や差し替えを誰が・どの頻度で行うのかという管理責任者を明確にし、不要になった古いドキュメントは削除または非公開に設定するなど、継続的なメンテナンスプロセスを構築しておきましょう。
情報漏洩を防ぐセキュリティ対策が必要
社内の機密情報や個人情報を扱うRAGでは、強固なセキュリティ対策の構築が必須です。アクセス権限の設定が不十分な場合、本来は役員しか閲覧できない人事情報や未公開の財務データが、一般社員の質問に対する回答として出力されてしまうリスクが生じます。社内での閲覧権限をAIの検索結果にも反映させる権限管理を実装するほか、入力されたデータがAIモデルの再学習に利用されない環境を選択・構築することが重要です。
生成AI関連の注意点は下記で解説

RAGに関するよくある質問
RAGの活用で業務を効率化
RAGは情報検索と最新のAI技術を見事に融合させ、ビジネスの現場に大きな革命をもたらす注目のソリューションです。社内データのスマートな横断検索をはじめ、カスタマーサポートの自動化、営業や採用活動の強力なバックアップなど、さまざまなシーンでめざましい業務効率化を発揮しています。
自社独自の文脈にしっかり合わせた正確な回答が得られることや、常に最新情報を反映できる点が、RAGならではの大きな魅力です。自社の課題に合わせた適切な設計とスムーズな運用体制さえ整えば、チームの生産性を一気に引き上げ、企業全体の成長を強力に後押しする最高のパートナーとなります。RAGを戦略的に導入し、より高度で創造性の高いビジネスの実現を目指してみてはいかがでしょうか?
最後に
RAGを業務で最大限に活用するには、データ整備や検索精度の最適化、継続的な運用改善まで見据えた設計が重要です。PoCによる検証からRAG環境の構築、業務への定着まで一貫して支援します。
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- *3:ChatGPTに社内文書に基づいた回答を生成させる仕組みを構築しました
- *4:LINEヤフー、RAG技術を活用した独自業務効率化ツール「SeekAI」を全従業員に本格導入。膨大な社内文書データベースから部門ごとに最適な回答を表示し、確認・問い合わせ時間を大幅に削減
- *5:社内向け汎用型AIアシスタントツール「SMBC-GAI」への RAG 技術を活用した社内情報検索機能の導入について
- *6:AWS公式導入事例
- *7:統合検索プラットフォーム「TOYO ChatGPT RAG適用版」を導入
- *8:生成AI活用環境「ChatAGC」の導入により、2024年に11万時間以上を創出
- *9:助太刀、生成AIを使った社内Wikiを開発生成AIの活用により社内業務の効率化を強化
- *10:三井住友カードとELYZA、お客さまサポートにおける生成AIの本番利用を開始
- *11:富士フイルムビジネスイノベーション、複合機保守を効率化する統合AIプラットフォームを開発
- *12:生成AIを活用した社内向けヘルプチャットシステムを導入し、DXによる業務変革と新たな企業価値の創出を目指します
- *13:生成AIチャットの全社員展開及び生成AIの内製開発について
- *14:朝日生命が「PKSHA AI ヘルプデスク」を導入、生成AIによる社内文書検索・回答生成を検証開始
- *15:出光興産、RAG構成の生成AIシステムを構築、競合製品分析や問い合わせ対応などに利用


