
- 感情分析AIはテキスト・音声・表情・生体の4系統で感情を数値化
- 社員のストレス可視化やCS向上などの成果が期待できる
- 導入・運用コストと個人情報保護の両立が成否を分ける
近年、「感情分析AI」がさまざまな分野で活用され、注目を集めています。
感情分析AIは、顔の表情や声のトーンから人間の感情を読み取れるAIです。この技術を使えば、社員のメンタルヘルスの維持や、顧客満足度を上げることが可能です。
この記事では、感情分析AIの基本概要や、社内導入のメリット、注意点について解説します。最後まで読むことで、感情分析AIがどのようにビジネスで活用されているのかが分かります!
ぜひ最後までご覧ください。
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感情分析AIとは

「感情分析AI」とは、人間の感情や気持ちを自動で認識できるAI技術です。これは、AIが画像認識技術やカメラ、マイク、センサーを通じて人間の喜怒哀楽を数値化し、そのデータに基づいて感情を認識します。
機械が人間の気持ちを理解できるのかと聞くと、不思議に思う方も多いでしょう。従来、人間の感情を把握できるのは人間のみであり、機械で測定することはできませんでした。
しかし、技術の進化によりAIも人間の感情を理解し、適切に対応できるようになってきています。
なお、画像認識について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

感情分析AIの仕組み

感情分析AIの仕組みは大きく分けて以下の4つに分類されます。
- 文章の感情分析AI
- 声の感情分析AI
- 表情の感情分析AI
- 生体データの感情分析AI
このように、さまざまな観点からAIは人間の感情を分析します。次に、それぞれの特徴を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
文章の感情分析AI
文章の感情分析AIとは、AIが自然言語処理という機能を用いて、人間が書いた文章を分析し使用している単語や言葉使いからその人の感情を判断する技術です。
自然言語処理とは、コンピューターが人間の使用している言葉の意味を適切に把握する機能です。例えば、文章の中でポジティブ表現が使われていれば、それを入力した人の気分の良さが分かります。
また、チャットボットとのやり取りを通じて、感情分析AIは学習を重ね分析精度を高められます。その結果、ユーザーに対して自然でフレンドリーな対応も期待され、人間のオペレーターのような反応を示します。
代表的な文章の感情分析AIツール
代表的な文章から感情分析を行うAIツールとして、User LocalとAmazon Comprehendがあります。
User Localは数百文字程度の日本語を入力すると、文章を記載した人の感情を分析、喜怒哀楽+恐れの5つの要素をレーダーチャートで可視化。

短い文章から文章を記載した人の感情を分析するため、商品レビューや口コミの解析に活用できそうです。
Amazon Comprehendは自然言語処理サービスの一つに感情分析が用意されています。

利用には費用がかかるため注意が必要です。ただし、User Localに比べて、感情が可視化されるだけでなく、インサイトや関係性も見出すことができます。
商品レビューや口コミを分析し、インサイト抽出・改善などのPDCAを回すこともできますね。
声の感情分析AI
声の感情分析AIとは、人間の声の抑揚や大きさである物理的な特徴を解析し、感情を判断する技術です。
日本語や英語だけでなく、あらゆる言語に対応しています。音声によって人間の感情が判定できれば、コールセンターの応対時に相手の感情を可視化できるため、適切な対応が可能になるでしょう。
また、ロボットやバーチャルアシスタントがこの機能を搭載すれば、人間と自然なコミュニケーションを取ることも期待されます。
代表的な声の感情分析AIツール
声の感情分析ツールには、User Localの音声感情認識AIがあげられます。

記載されている「ディープラーニングを用いた解析AIが、入力された音声から感情を読み取ります。」を実際に読み上げ、録音した結果がこちらです。

ただ読み上げているだけなので、読み上げている時の私の感情は平穏であり、解析結果も平穏な感情でした。
音声ファイルをアップロードすることもできるので、コールセンターなどでのやり取りを聞かせることで顧客の感情を分析することが可能。
表情の感情分析AI
表情の感情分析AIとは、カメラを通して人間の表情を分析し、感情を読み取る技術です。これは、喜怒哀楽といった基本的な感情だけでなく、微妙な表情の変化や雰囲気まで捉えられます。
例えば、ひとつの商品を提示すると、AIはその人の表情から興味を示しているかどうかといった細かい点まで把握できます。
代表的な表情の感情分析AIツール
表情の感情分析AIツールとしてエモスタのエモリーダーがあります。

エモリーダーはデモ利用がありませんでしたので、ご興味のある方は問い合わせる必要があります。特徴として、約10万の教師データを活用したAIを使い、精度93%を達成。営業や面接・面談、ストレスチェックなどに活用できるでしょう。
生体データの感情分析AI
心拍数や呼吸、血圧などのバイタルをもとに、AIが人間の感情を分析します。表情の感情分析と同様に、カメラやサーモカメラを用いて、バイタルチェックを実施。
表情や音声の認識とは異なり、ウェアラブルデバイスを装着することでデータの収集が可能です。ウェアラブルデバイスとは、手首や腕など身体の一部に装着して使用するデバイスのことを言います。
ウェアラブルデバイスを活用することで、利用シーンに限定されることなく感情データを収集できる点は大きなメリットです。
代表的な生体データの感情分析AIツール
生体データの感情分析AIツールとして、Owl Visionがあげられます。Owl Visionはユーザーの視線や体の動きを測定し、その結果に基づいてインサイトの抽出が可能なAIツール。

Owl Visionで感情分析ができるのはデスクトップ版のみであり、デスクトップ版では動画をパソコン上から視聴することで、ユーザーの感情や視線を分析することが可能です。
感情分析AIを活用するメリット
- 社員のストレスチェック
- 顧客満足度を高める
感情分析AIは、さまざまな場面で活用されています。ここでは、特に重要な2つのケースに絞って解説します。
社員のストレスチェックができる
近年、社員のメンタルヘルス管理において、音声の感情分析AIが活用されています。音声の感情分析AIを活用することで、社員の精神状態を把握できます。
なぜなら、声の抑揚やトーンに感情が表れるため、社員のストレス度を確認できるからです。
人間関係にトラブルが生じストレスを抱えている場合、その心情が声に反映されることもあります。そのため、感情分析AIはその変化を捉えることができ、社員のストレスチェックに役立ちます。
顧客満足度を高めることができる
感情分析AIを用いて、企業が顧客の感情やニーズを把握することで、対応やサービスの質を改善できます。感情分析の精度が上がれば、それに伴い顧客満足度が向上します。
ある商品を顧客に勧める際、その方がどのような感情を抱いているかを判断するのは難しいでしょう。しかし、感情分析AIを活用すれば、顧客のニーズに応えられるため、結果として販売促進に繋がります。
感情分析AIの導入事例
最近では、感情分析AIを導入している企業も存在します。AIがどのように活用されているのか、ぜひ参考にしてみてください。
事例①ベネッセコーポレーション
株式会社ベネッセコーポレーションでは、英語オンラインレッスンに表情の感情分析AIを導入し、講師の表情やジェスチャーをリアルタイムで解析しています。
これは、すべての講師が高い水準の指導を可能にするためです。
オンラインスピーキングは未就学児から中高生までが対象であるため、初めて外国人と話す子供も少なくありません。そのため、子供たちに安心してレッスンを受けられるために、笑顔やジェスチャーを重視しています。※1
事例②木村屋總本店
木村屋は、若年層の顧客を獲得するため、AIを活用した食品実績を持つNECとコラボレーションしました。ABEMAの恋愛番組「今日、好きになりました。」の会話データをAIで分析し、その結果、感情が似ている恋愛シーンと食品を紐づけました。
こうして、音声の感情分析AIによる「恋AIパン」が開発されたのです。以下のXの投稿では、「恋AIパン」について書かれています。
このパンは全部で5種類の味があり、それぞれ「初めてのデート味」や「結ばれる両想い味」など、恋愛に関連した名前が付けられています。※2
事例③株式会社ベネッセコーポレーション
株式会社ベネッセコーポレーションは、通信教育「進研ゼミ」の英語オプション教材「オンラインスピーキング」において、CACの表情・感情認識AIを活用したレッスン品質向上システムを2022年3月に導入。未就学児から中高生を対象とした英語オンラインレッスンでは、初めて外国人と英会話をする子どもも多く、講師の表情や雰囲気、接し方といった非言語コミュニケーションが学習効果を大きく左右します。
しかし、これまでは講師の指導テクニックが経験値や感覚に依存しており、全講師が高い水準の指導を実現することが課題でした。導入されたシステムは、Web会議のコミュニケーションを円滑化するCACのソフトウェア「心sensor for Communication」をベースに開発されたもので、レッスン中の講師の表情とジェスチャーをリアルタイムに解析。
レッスン終了後すぐに、講師自身の表情やジェスチャーの回数が分かるレポートがPCモニターに表示され、即座に振り返りができる仕組みです。
テスト導入段階で、顧客評価が高いレッスンには「感情表現が豊かでジェスチャーが多用されている」という共通の傾向が見られ、特に「笑顔の頻度」が重要であることが数値で明らかになりました。
これにより、経験の浅い講師でも効果的な指導方法を具体的に理解し、実践できるようになっています。※3

事例④体調・コンディショニング管理
三菱電機が開発した「Maisart Driver Monitoring」は、車載カメラ1台だけで運転者の生体情報と感情状態を同時に読み取るシステム。
顔の頬部分のわずかな色の変化を分析して脈拍を計測し、さらに表情の変化と組み合わせることで、危険な精神状態を事前に察知します。

このシステムの優れた点は、眠気が表れる前段階の「集中力の低下」と「イライラ感」を組み合わせて検知できることです。
危険が顕在化する数秒前に警告を発することで、自動で路肩に停車するなどの安全制御につなげることが可能になります。2030年の実用化を目指して開発が進められており、感情的な要因による事故を防ぐ新しい安全技術として注目されています。※4
感情分析AIをPythonで実行する
感情分析AIはさまざまありますが、テキストから感情分析を行うのは自分でも作ることができます。
下記のコードをgoogle colaboratoryに貼り付けて実行すれば、テキストから感情分析を行うことが可能。
サンプルコードはこちら
!pip -q install transformers torch protobuf fugashi unidic-lite
from transformers import pipeline
# Zero-shot 感情分類パイプライン
clf = pipeline(
"zero-shot-classification",
model="Formzu/bert-base-japanese-jsnli"
)
labels = ["安心", "怒り", "期待", "戸惑い"]
sample_reviews = [
"注文から発送までがスムーズで安心できました。",
"見た目はいいけど、すぐ壊れてガッカリした。",
"値段のわりに機能がしっかりしていて期待以上。",
"ボタンが反応しなくてイライラする。",
"使い方がよく分からず、ちょっと戸惑った。"
]
for text in sample_reviews:
result = clf(
sequences=text,
candidate_labels=labels,
hypothesis_template="この文章は{}という感情である。"
)
print(f"\n📝 Review: {text}")
for label, score in zip(result["labels"], result["scores"]):
print(f" → {label}: {score:.3f}")
結果はこちら。
📝 Review: 注文から発送までがスムーズで安心できました。
→ 安心: 0.557
→ 期待: 0.424
→ 戸惑い: 0.016
→ 怒り: 0.003
📝 Review: 見た目はいいけど、すぐ壊れてガッカリした。
→ 戸惑い: 0.530
→ 期待: 0.211
→ 怒り: 0.159
→ 安心: 0.100
📝 Review: 値段のわりに機能がしっかりしていて期待以上。
→ 期待: 0.634
→ 安心: 0.323
→ 戸惑い: 0.031
→ 怒り: 0.012
📝 Review: ボタンが反応しなくてイライラする。
→ 怒り: 0.602
→ 戸惑い: 0.322
→ 期待: 0.058
→ 安心: 0.017
📝 Review: 使い方がよく分からず、ちょっと戸惑った。
→ 戸惑い: 0.731
→ 安心: 0.162
→ 期待: 0.055
→ 怒り: 0.052感情分析AIを活用する際の注意点

感情分析AIはさまざまな分野で活躍しています。しかし、感情分析AIを活用する際には、以下のような2つの注意点があります。
- 導入コストがかかる
- 個人情報の取り扱いに注意する
それぞれ1つずつ解説しますので、ぜひ参考にしてください。
導入コストがかかる
感情分析AIの導入にはコストがかかります。まず、AIを使って感情分析を行うためには、そのAIに必要なデータの収集作業が不可欠です。
そのため、社内ですべての必要データが準備できない場合、外部で用意する必要があります。
また、導入後も定期的なメンテナンスが必要なため、初期コスト以外にランニングコストについても考慮しなければなりません。初期費用だけでなく、導入後の維持費もかかってくるため、総合的なコストを見積もっておくことをおすすめします。
個人情報の取り扱いに注意する必要がある
感情分析AIの導入において、個人情報の取り扱いは特に注意が必要です。
これは、個人の感情データをリアルタイムで収集し分析しているため、プライバシーの侵害につながる恐れがあるためです。
例えば、感情データが無断で収集され、第三者にその情報が漏洩されれば、ユーザーの自由や尊厳が侵害される可能性があります。そのため、感情分析AIを活用する企業は、プライバシー保護を徹底し、透明性を確保した運用を行うことが重要です。
なお、感情分析AIにおける情報流出のリスクについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

新たな可能性を秘めた感情分析AI
いかがだったでしょうか?
感情分析AIを活用すれば今まで感じ取りづらかった人間の感情が可視化されるため、いろんな分野で活躍しています。例えば、社員のストレスチェックによるメンタルヘルスの改善や、顧客の感情を分析することで顧客満足度の向上も実現できます。
また、感情分析を使って新たな商品やサービスを生み出すことができるでしょう。
ただし、感情分析AIは利便性が高い反面、導入コストや維持費がかかること、さらに個人情報の漏洩に対する懸念があります。そのため、今後の維持費を考慮し、個人情報を保護するためにも透明性の確保が不可欠です。

最後に
いかがだったでしょうか?
社内のメンタルヘルス向上や顧客満足度の最適化などにおいて、感情分析AIの活用がビジネスにどのように価値をもたらすか。一度ご確認してみてください。
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【監修者】田村 洋樹
株式会社WEELの代表取締役として、AI導入支援や生成AIを活用した業務改革を中心に、アドバイザリー・プロジェクトマネジメント・講演活動など多面的な立場で企業を支援している。
これまでに累計25社以上のAIアドバイザリーを担当し、企業向けセミナーや大学講義を通じて、のべ10,000人を超える受講者に対して実践的な知見を提供。上場企業や国立大学などでの登壇実績も多く、日本HP主催「HP Future Ready AI Conference 2024」や、インテル主催「Intel Connection Japan 2024」など、業界を代表するカンファレンスにも登壇している。

